絵本

『ゴリラさんは』徹底レビュー|優しいゴリラとバナナのほっこり物語

大好きなバナナをめぐってゴリラさんとおサルたちが繰り広げる、思わず笑顔になる心あたたまる絵本『ゴリラさんは』。0〜3歳のお子さんへの読み聞かせにぴったりと評判の本作を、実際に親子で読んだ体験を交えながらご紹介します。

絵本『ゴリラさんは』の基本情報

  • タイトル:『ゴリラさんは』
  • 作・絵:北村 裕花(きたむら ゆうか)
  • 出版社:講談社 講談社の創作絵本シリーズ)
  • 初版発行日:2021年9月30日
  • ページ数:36ページ
  • 定価:1,540円(税込)
  • ISBN:978-4-06-524911-6
  • 対象年齢:公式には3歳〜5歳ですが、シンプルな繰り返しの内容で2歳前後から十分楽しめます。0~1歳児でも、色鮮やかな絵と言葉のリズムを親子で味わえます。

あらすじ・内容の概要

大きなゴリラさんはバナナが大好物。今日も両腕に抱えきれないほどのバナナを持ってご機嫌でジャングルを歩いています。すると道中で、バナナをじーっと見つめるサルさんたちに次々と出会いました。優しいゴリラさんは「はい、どうぞ」とサルさんたちにバナナを分けてあげますが、とうとう残り一本になってしまいます。

ところが…まだ遠くからゴリラさんのバナナを見つめるサルさんが! 「さあ、どうするゴリラさん!?」— 大好きなバナナをめぐって繰り広げられる、ゴリラさんとおサルたちのほっこり優しい物語です。 オチはここでは伏せますが、読後には親子で温かな気持ちになれることでしょう。

※文章は平易で長すぎず、「ぬん。」「ぬぬん。」「ぬぬぬん。」といったユーモラスな擬音が随所に登場し、物語を盛り上げます。ゴリラさんの決めゼリフはありませんが、サルたちの登場シーンのこの繰り返しの音がクセになります。

この絵本を選んだ理由・背景

わが家では2歳になる息子が動物、とりわけゴリラが大好きです。図書館でたまたま本書を見つけ、表紙に描かれたバナナを抱えた大きなゴリラさんに息子が一目で釘付け!「読んで!」とせがまれたので、そのまま借りて帰りました。案の定、息子はこの絵本をすっかり気に入ってしまい、抱えて離さなくなってしまいました

実はこの絵本、発売当初からSNSやレビューサイトで話題になっており、「久しぶりに出会えた大当たりの絵本!今年の誕生日プレゼントはこれで決まり」といった熱烈な感想も見られました。評価も非常に高く、Amazonのレビューでは「ゴリラ好きな子がもっと好きになりました。絵もストーリーもよかったです。」と★5つ評価がついています。動物ものの絵本が好きな親子にはたまらない一冊だと感じ、手に取った次第です。

読んでみた感想(親目線)

結論から言うと、大人が読んでもほっこり癒される素敵な絵本でした。 大柄で迫力満点のゴリラさんですが、絵本の中の表情はとっても愛嬌があり、見ているこちらも思わず笑顔になります。北村裕花さんの描くゴリラさんは毛並みもふさふさとリアルでありながら、どこか優しげでユーモラス。対するおサルたちも、それぞれマンドリルやニホンザル、テングザルにシロテテナガザルなど個性的なメンバーが登場し、カラフルで表情豊かに描かれています。動物好きの親としても、「次はどのサルが出てくるかな?」とページをめくるワクワク感がありました。

物語の展開自体はシンプルで、小さな子どもにも理解しやすい内容です。ゴリラさんが出会うサルたちに次々バナナを分け与えていくだけのストーリーですが、そこに繰り返しのリズムと擬音の面白さが加わり、単調さを感じさせません。特にサルたちが現れるシーンの「ぬん。ぬぬん。ぬぬぬん。」という擬音語はインパクト抜群で、読み聞かせる側としても思わず声色をつけて楽しんでしまいました。

また、この絵本のテーマは「分かち合うやさしさ」だと感じました。自分が大好きなバナナを惜しげもなく他者に差し出すゴリラさんの姿は、大人の目から見ると少しお人好しすぎるようにも思えます。しかし、その無償の優しさに触れて、読後は心がほっと温まるのです。実際、ある親御さんは「食いしん坊な親子の私たちも、このゴリラさんの優しさには脱帽です」とコメントしており、ゴリラさんのなんとも言えない優しい表情に感服したそうです。押しつけがましくない形で「思いやり」を子どもに伝えられる点も、この絵本の魅力だと思います。

ただ一方で、筆者自身「こんなに何でもあげちゃってゴリラさん大丈夫?」と心配になったのも事実です。大人目線では「猿たちにたかられて気の毒…」なんて感じてしまいましたが、子どもにとっては純粋に優しいゴリラさんの行動が安心感につながるようです。深く考えすぎずハッピーエンドの物語として楽しむのが正解だと感じました。

子どもの様子・反応(実体験)

息子(2歳)の反応は終始ニコニコで大興奮! 特にゴリラさんがサルたちにバナナをあげる場面では、毎回得意げに「はい、どうぞ〜」と一緒に真似っこしていました。サルが次々出てくる繰り返し展開もツボに入ったようで、「また出てきた!」「次は?」とページをめくるたびに声をあげて楽しんでいました。

なかでもヒットしたのが、やはり「ぬん。ぬぬん。ぬぬぬん。」のフレーズです。初めはこちらが読んで聞かせていましたが、回を重ねるごとに息子も覚えてしまい、自分から「ぬん!」と言って笑っています。あるご家庭でも、2歳のお子さんがこの擬音をすっかり暗記してしまったという声があり、子どもにとって相当インパクトがあるようです(擬音のリズムが楽しいのでしょうね)。

また、息子はゴリラさんがバナナを抱えてにっこりしている表紙の絵がとても気に入ったようで、本棚から自分で引っ張り出してはしげしげと眺めています。「ゴリラさん優しいね」「バナナいっぱいだね」と話しかけると、「うん!」「おいしそう!」と嬉しそうに答えてくれました。大好きなバナナとゴリラが主役ということで、物語の細かいところまで理解していなくても十分に楽しめている様子です。

実際のレビューでも、「図書館で借りたけれど子どもが手放そうとしない」「ゴリラの表情を見るだけでも大喜び 」「ゴリラさんにメロメロです」といったエピソードが語られています。子どものハートをわしづかみにする要素が詰まっているのでしょう。0〜1歳代のお子さんの場合、ストーリーはまだ分からなくてもカラフルな絵を眺めたり、パパママの発する擬音を聞くだけで十分楽しめると思います。事実、1歳8ヶ月の孫に読み聞かせたというレビューもあり、この年齢でも最後まで興味をもって聞いてくれたようです。

おすすめポイント・気になる点

◎ おすすめポイント:

  • 絵の迫力と可愛らしさ:ゴリラさんとサルたちの表情が豊かで愛嬌たっぷり。大きくはっきり描かれているので、0〜3歳児にも見やすく印象に残ります。色彩も鮮やかで動物たちの特徴がよく表現されています。
  • 繰り返しが楽しい構成:同じフレーズの繰り返しやリズミカルな擬音語(「ぬん」シリーズ)は、小さな子どもが安心感を持って聞ける王道パターン。読み聞かせにも最適で、親子で声に出して楽しめます。
  • 優しさを感じるストーリー:自分の好きなものを分け合うゴリラさんの姿から、さりげなく「やさしさ」「思いやり」を学べます。教訓めいておらず自然に伝わるのが◎。最後までイヤな気持ちになる場面がなく、ほっこりと温かい読後感です。
  • 動物好きにはたまらない:ゴリラだけでなく様々なおサルが登場するので、動物園が好きなお子さんにもピッタリ。「これは○○ザルかな?」と親子で会話が弾みます。動物の名前探し的な楽しみ方もできます。

△ 気になる点:

  • 大人視点ではリアリティよりもファンタジー重視:ゴリラさんが次々バナナをあげてしまう展開に、「そんなにあげちゃって…」と大人は若干ハラハラするかもしれません。一部には「猿たちにたかられて可哀想」「現実ならちょっとヘン」という声もありました。しかし子どもは素直に物語を楽しんでおり、深刻に捉える必要はなさそうです。
  • ストーリーの起伏:起承転結がシンプルで驚きの展開などはありません。そのため、スリル満点のお話を求める場合は物足りないかもしれません。ただ、この絵本の狙いは安心感のある繰り返しにあるので、対象年齢の子にはむしろちょうど良いと感じました。
  • 紙の耐久性:厚紙ではなく通常の紙の絵本なので、0〜1歳児が自分で扱うと破れてしまう恐れがあります。読み聞かせの際は大人がページをめくるなどしてあげると安心です。

購入リンク・参考情報

まとめ・締めの言葉

『ゴリラさんは』は、優しさと思いやりがぎゅっと詰まった素敵な絵本です。迫力ある絵に惹きつけられ、ユーモラスな繰り返しに笑い、読み終えれば心がポッと温かくなる――そんな体験を親子でもたらしてくれました。0〜3歳の小さなお子さんでも理解しやすく、何度でも「もう一回!」とせがまれること間違いなしです。

寝る前の読み聞かせにもおすすめですし、動物好きの子へのプレゼントにも喜ばれるでしょう。ぜひゴリラさんのやさしい世界を、あなたもお子さんと一緒に味わってみてくださいね。きっと読み終えた後、親子でほっこり幸せな気持ちになれるはずです。📚💕

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